立教大学 | 西池袋 | 関根研究室HP

研究テーマ

1. ゲノムDNAを「変えない」機構と「変える」機構の研究

遺伝情報を担うDNAは親から子へ受け継がれる生命の設計図ですから、「変わらないこと」が大切です。DNAは様々な要因によって絶えず傷を受けているので、生物はそれを修復により元に戻し、大切な設計図を維持する機構を持っています。しかし、設計図が永遠に変わらなければ生物の進化は有り得ません。生物は時にはDNA配列を積極的に変化させる力を秘めています。このように、生物ゲノムは自らを「変えずに維持する」機構と「積極的に変える」機構を持ち合わせているのです。

(1)植物オルガネラゲノムの安定性維持機構の研究:植物のオルガネラ(ミトコンドリアと葉緑体)は核とは別に独自のゲノムDNAを持っています。このゲノムには、光合成や呼吸という極めて重要な反応に必要なタンパク質の遺伝子が存在しています。我々は、オルガネラDNAを安定に維持する働きを持つ複数のタンパク質を発見しました。そのタンパク質が無くなると、オルガネラゲノムが異常な組換えを起こしバラバラになってしまいます。この発見は、オルガネラゲノムは異常な組換えを起こしてしまう性質を持っており、それを抑える機構をオルガネラが備えていることを示しています。最近、これらのタンパク質が、核様体の形成やオルガネラゲノムの母性遺伝にも関わることが分かりました。これらのタンパク質がどのような機構でゲノムの安定性や核様体形成に関わっているか、を探ると共に、同様の働きをする新しいタンパク質を探す研究も進めています。このテーマは、ヒメツリガネゴケと緑藻クラミドモナスを研究材料に使います。

(2)トランスポゾン(動く遺伝子)の研究:ゲノムを「積極的に変える」ことに大きく寄与しているのがトランスポゾンで、(ヒトを含めて)あらゆる生物のゲノム上に存在します。トランスポゾンは、ゲノム上を自由に飛び回る能力を持っています。これによりゲノムは大規模に改変されてしまいますが、場合によっては、それが新しい能力の獲得や環境適応能力の向上をもたらし、生物ゲノムの進化につながります。最近我々が見出した、トランスポゾンの転移能力を変換したり、ゲノム中のトランスポゾンのコピー数を調節したりする新しいタンパク質の機能解析を中心にして、トランスポゾンの謎を探っています。また、来年度はトランスポゾンの転移に影響を与える新しい因子の発見にも取り組む予定です。


2. 植物オルガネラの成立とオルガネラ機能の研究

(1)植物細胞における遺伝子の核移行の研究:オルガネラは原始真核細胞にバクテリアが共生して成立したと考えられます。その過程で、バクテリアが持っていた遺伝子の多くは核に移行しました。核に移行した遺伝子が正しく機能するようになる過程には多くの謎が存在します。この謎に切り込むことは、「そもそも真核細胞はどのようにして成立したのか?」という、まだ解き明かされていない生物学上極めて大きな問題への重要な足がかりになると考えています。現在、研究室で取り組んでいるのは、「オルガネラ誕生の過程で、タンパク質のオルガネラ輸送シグナルはどのように獲得されたか」です。オルガネラ輸送シグナルは、オルガネラで機能するタンパク質がオルガネラに輸送されるために必要です。このシグナルはバクテリアでは必要ないので、オルガネラが誕生する際に獲得されたと考えられますが、その獲得機構は大きな謎です。この興味深い謎に関して、私たちはある仮説を立てました。その仮説の実証に取り組んでいます。

(2)葉緑体リボソームの研究:葉緑体ゲノム上の遺伝子の翻訳は、葉緑体内で葉緑体リボソームにより行われます。葉緑体リボソームは、細胞質やミトコンドリアのリボソームには存在しないいくつかのタンパク質(PSRP)を含んでいます。PSRPは、葉緑体独特の機能に深く関わると予想されるだけでなく、「バクテリアが葉緑体に変化するためにそれを獲得することが重要だった」と捉えることができますが、その機能は全く不明です。PSRPは7種類ありますが、その1つPSRP-1は、リボソームの保存に重要であることを予想しています。また、最近、ヒメツリガネゴケのPSRP-1が植物細胞の分化に関与しているらしいことが分かりました。リボソームタンパク質がどのような機構で細胞分化に関わっているのか、という興味深い問題を追及します。


3. RNA分子の新しい機能の研究

(1)non-coding RNAの研究:タンパク質をコードしていないRNA(non-coding RNA)が細胞内に予想以上に多種類存在し、多様な働きをしていることが最近わかりつつあり、生物学のホットな話題の1つになっています。RNAは、まだ私たちが知らない多彩な機能を果たしているに違いありません。私の研究室では、病原性バクテリアから数種類の新しいnon-coding RNAを発見しました。このRNAの機能、特に病原性遺伝子の発現や、病原性遺伝子の獲得に関与したプロファージの誘発に注目して解析を進めています。これは病原性の制御という病気の治療や薬剤の開発にもつながる研究であると考えています。

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now